全員の力で掴んだ歓喜の「荒ぶる」
「日本一になるのは早稲田なんだよ!!」
今田コーチがそう叫ぶと、狭いウォームアップスペースの中は22人の怒号とともに殺気立った気配に包まれた。ひとりひとりが決勝戦への強い思いをほとばしらせていたが、試合後、豊田将万主将はこの時を振り返ってこう語った。「みんなイライラしていて、僕が何を言ってもダメだった。特に宮澤とかは目がおかしくて(笑)」。
豊田組は、「いわゆる分かりやすい気合いの入れ方をしてはダメなチーム。気持ちを全面に押し出す奴、飄々としてる奴、色んな人間がいる。それぞれが“普通に”(試合に)入っていく状態が一番いい」(中竹監督)チームなのだ。
そんな、豊田組にとって決して望ましいとは言えない状況を振り払ったのは、試合に出られない4年生達だった。ウォームアップも終盤にさしかかり、最後のタックル練習を迎えた時、それまでスペース脇でアップの様子を見守っていた4年生全員がブレザーを脱ぎ捨て、タックルバックをその手に持った。そうして、この日アカクロを着て戦うメンバーのタックルを、彼らが自らの全身で受け止めたのである。PR山下高範は、4年間同じポジションを争った内田雄介に渾身のタックルを浴びせると、天を仰ぎ、声を上げて泣いた。「こいつのためにスクラムをしてこようと思った」という。3年生WTB早田健二のタックルを受け止めたのは、怪我で出場の叶わなかったエースWTB田中渉太。早田は涙を流し、声を張り上げながら田中に二度、三度と突き刺さった。それはいつもの早田からは想像できない姿だった。2人と同じウイングを務める2年生・中濱寛造は、そうした4年生達の姿を見て、「もう自分はどうなってもいいと思った」という。倒され、立ち上がり、タックルを受け続けた4年生の白いワイシャツに汚れが目立ち始めた時には、そこにいる誰もが号泣していた。
その後、全員を集めた豊田は、大きな円の中で一言、ふり絞るように叫んだ。「思いっきりだ!思いっきりいこう!」この時、もうこれ以上の言葉は必要なかったのかもしれない。22人は、いかなる局面に遭遇しようとも自分達のスタイルを貫き通し、悲願の「荒ぶる」を勝ち取った。
「全部員、スタッフ・・・、みんなの力があったからここまで頑張って来れた」。お立ち台での豊田の言葉は、こんなところにも収斂されている。

仲間の思いがこの背中を後押しした